加登屋旅館

更新日:2024年01月22日

後ろに木々がある木造の加登屋旅館全景(奥から本館・別館・悠仙閣)の写真

加登屋旅館全景(奥から本館・別館・悠仙閣)

加登屋旅館は、板室温泉街の最も奥まった場所に位置します。

板室温泉は、康平2年(1059)に発見されたと伝えられ、那珂川の支流湯川沿いの山峡に開けた湯治場です。泉質はアルカリ性単純泉で古来より神経痛やリウマチなどに効くとされ「下野の薬湯」としても知られています。
昭和53年(1978)の大火により、多くの木造旅館が焼失した中で、加登屋旅館はかつての湯治場の雰囲気を色濃く残す貴重な建物です。平成28年(2016)2月25日に国の登録有形文化財に登録されました。

名称

加登屋旅館(本館・別館・悠仙閣)(かどやりょかん(ほんかん・べっかん・ゆうせんかく))

指定年月日

平成28年(2016)2月25日

員数

各1棟

指定別

国登録

区分

有形文化財

種別

建造物

所在地

那須塩原市板室字塩沢859

所有者

個人所有

地図リンク

加登屋旅館本館

入口に看板がある3階建ての加登屋旅館本館(大正8年頃築造)の写真

加登屋旅館本館(大正8年頃築造)

板室温泉加登屋旅館本館は大正8年(1919)築と伝えられる。写真資料によると当初道路に面して吹き放し廊下であったが、その後昭和27年(1952)から36年(1961)の間に欄干付建具入りの出窓に改造されている。
建物は木造3階建て、1階南東に2間の間口に屋号の入った4枚引違いの硝子戸をもつ玄関を配し、玄関を入ると右手には帳場、正面に応接室を持つ。また、北東角には間口1間の旧玄関と同じく間口1間の旧帳場が残る。西側中央には厨房がある。
内部に関しては、3階部分にかつての状態が保存され、西側に階段と廊下、東側にも廊下があり、間口1間半、奥行き2間、6畳大の客室が襖のみの間仕切りで5室が連なる、往時の湯治場客室の様子を良く伝えている。
2階においても、内装、界壁(かいへき)は改装されているものの間取りは3階と同じで、6畳大の客室5室が連なる構成となっている。
外観は欄干の付く出窓など、往時の湯治場の温泉宿の姿を良く残し、別館、悠仙閣と3棟が繋がり、温泉街の歴史的景観の形成に寄与する建造物である。
旧玄関には貴重な本業タイルが残されているほか、電話室のドアが場所を変え残されている。

加登屋旅館別館

木造3階建てでサッシ窓の加登屋旅館別館(昭和12年頃築造、昭和48年改修)の写真

加登屋旅館別館(昭和12年頃築造、昭和48年改修)

加登屋旅館別館は、大正後半から昭和初期の建築と考えられる。昭和48年(1973)に本館、悠仙閣と繋げ、一体として使われるようになった。本館と悠仙閣に挟まれた位置に建つ。
建物は木造3階建て、間口4.545メートル、奥行き7.272メートル、寄棟造(よせむねづくり)、鉄板瓦棒葺(てっぱんかわらぼうぶき)となっている。
現在は本館、あるいは悠仙閣から内部廊下によって繋がるだけで入口はない。
現在は1階に板の間付10畳の客室、2階にそれぞれ4畳、4.5畳、6畳の3室の客室となっているが、本館同様、現在は使われていない3階部分にはかつての状態が保存され、10畳の客室の西、北、東の3方向に廊下が廻り、西側広縁に階段跡が残っている。
また、3階の一部には上げ下げ窓が残されている事や、窓枠がペンキ塗りであった痕跡や東側出窓上外壁部分にドイツ壁が残っており、大正から昭和に掛けて流行した洋館意匠を旅館建築に取り入れた建物であった事が偲ばれ、時代の特徴を示す建築として、価値が高い。
3階客室違い棚には珍しい形状の海老束(えびづか)があったり、廊下角の吹き寄せ竿縁天井(さおぶちてんじょう)が扇張りとなっていたり、当時の旅館建築の凝らされた意匠の片鱗が伺える部分を残している。

加登屋旅館悠仙閣

木造2階建てで入口がある加登屋旅館悠仙閣(昭和27年頃築造)の写真

加登屋旅館悠仙閣(昭和27年頃築造)

加登屋旅館悠仙閣は昭和27年(1952)築であることが登記簿により確認出来る。浴室及び別館とのつなぎ部分を除き、改変の痕跡は認められない。
建物は木造2階建て、桁行き8.787メートル、奥行き8.029メートル、切妻造(きりづまづくり)、鉄てっぱんかわらぼうぶき板瓦棒葺で、道路に面して平部分に軒破風を持つ。正面玄関上の庇も入母屋破風の意匠となっている。外壁は腰部洗い出し、漆喰塗りとなっていて、各客室の下地窓がアクセントを添えている。1階は北寄りに本館同様、2間の間口に屋号の入った4枚引違いの硝子戸をもつ玄関、6畳板の間付の客室、西側の湯川に面して大小の浴室という構成になっている。2階は中央西寄りの階段を取り囲むように4.5畳、6畳床の間付、8畳床の間付、10畳床の間付、計4室の客室を持つ。
玄関や各客室床の間などは随所に銘木を使い、客室入口には化粧庇を設け、玄関に意匠性に富んだ時代の変化を写した建物といえる。
大正期の湯治客が自炊する鄙びた湯治場の温泉宿の様子を今に伝える本館、昭和初期の洋館建築の意匠を取り入れた別館、戦後に建てられ、温泉旅館としての意匠性を競うがごとくの悠仙閣、その3棟の建物が連続して残されている事により、この一角に往時の湯治場の歴史的景観を醸造していることが大変重要である。

この記事に関するお問い合わせ先

教育部 生涯学習課 文化振興係

〒329-2792
栃木県那須塩原市あたご町2番3号

電話番号:0287-37-5419
ファックス番号:0287-37-5479

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